【事例11】公正証書遺言があっても…

相談内容

長男であるC様は15年以上前からお父様が営んでおられた農業を手伝い、お父様とともに農業を拡大してこられましたが、10年程前にお父様が引退した後は、C様が完全に業務を引き継ぎ、今日まで継続して農業を営んでこられました。そのような中、お父様が病気になり入院から約半年後にお亡くなりになられました。 お父様の相続手続きを進める中で、長女であるC様のお姉様がお父様の遺言書を持っていることが分かり、お姉様に開示してもらいました。
遺言書は公正証書で、叔父様と叔母様が証人として作成されており、内容は「全ての財産を長女に相続させる」というものでした。
C様は農業をお父様から継承しているので、当然、お父様名義の農地はご自身が相続するものと思っていたのですが、遺言書によって、自身が営んでいる農地も、ご自身が現在住んでいる自宅も相続できないこととなり、悩んだ末にセンターに相談に来られました。

解説

C様や証人となっている叔父様叔母様等、親族の皆様に対し、遺言を執行しても遺留分を侵害している場合は遺留分減殺請求をすることができることを説明しました。
C様としては、今後も農業を続けていく為にも、お姉様に対して遺留分減殺請求を行い、姉弟間で話し合いをしていく必要があります。
そこで親族の方が中心になり、姉弟間の揉め事を回避するため、遺言書が作られた経緯を確認しました。
亡くなられたお父様は10年前、農業を引退したときに農地及び自宅宅地については農業を継いでいるC様に贈与したつもりでおられたようで、経済的に困窮していた長女に預貯金を相続させるつもりで遺言書を作成したのではないか、と証人であった叔父様・叔母様が証言されました。
この経緯を踏まえ、親族で協議した結果、遺言書は執行せず、長女であるお姉様を交えてお父様の遺産分割協議を行えばどうかという結論になりました。
お姉様が遺産分割協議に同意していただけるかがポイントとなりましたが、親族の方が説得して一旦すべての財産をお母様に相続させることでご理解を頂き、ひとまずC様は農業を続けることができる、ということで安心して頂きました。

ポイント!

遺言書を作成する際、遺言者が高齢である場合などは記憶違いや間違った思い込みなどがある為、財産調査を慎重に行う必要があります。また、遺言内容は包括的な記載よりも、個別具体的に記載を行った方がミスの軽減になります。

●公正証書遺言

遺言者が公証人に遺言の内容を話し、それを公証人が書面にて作成した遺言書です。通常は遺言者が公証役場に行き、作成しますが、何らかの理由で公証役場へ行くことが出来なければ、公証人が自宅や病院に来て作成することもあります。
公正証書遺言作成にあたり(1)遺言者本人の印鑑証明書(2)遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本(3)財産を相続人以外の人に遺贈する場合はその人の住民票(4)財産に不動産があれば、その土地・建物の登記簿謄本(5)その不動産の固定資産評価証明書又は名寄せ帳(直近の納税通知書でも可)(6)不動産以外の預貯金・株券などは、その金融機関先・金額・株価の時価総額などのメモ(7)証人2人とその人の住民票又は運転免許証の写しなどが必要となります。事前に公証役場で相談されると良いでしょう。

●遺留分

一定の相続人に対して保障される最低限の相続割合のことをいいます。遺言による相続・遺贈に対する制約となりますが、遺留分を侵害していても、その遺言が無効となるわけではありません。なお、遺留分の主張には時効があり、一定期間経過とすると権利は消滅します。