【事例13】娘達のために相続放棄

相談内容

Qさんから「父が亡くなったので相続放棄をしたい」と問い合わせがありました。
亡くなったQさんのお父様は自宅の土地建物と併せて、先祖代々続く地域住民の人達と共有名義で多くの山林を所有されていました。50名の共有名義の山林が54筆ありました。共有名義の山林を相続した場合、名義書換をするだけでなく、山林の管理や地域住民の人達との付き合い等をしていかねばならず、遠方に住んでいるQさんにとっては非常に煩わしい問題だったのです。
特に悩んでいたのは、自分が相続する分には遠方でも何とかなるものの、自分に相続が起こったときには子供たちの負担になる事でした。Qさんには高校生と中学生と小学生の3人の娘さんがいらっしゃいましたが、「3人の子供達も将来は結婚をして家を出ていくだろう。そんな娘たちが、将来自分の相続でこんな共有名義の山林を引継いでも、負担を掛けてしまうだけなので申し訳ない。」という気持ちだったのです。
親族にもどうするべきかと色々と相談をしました。当然周囲からは先祖代々の土地であり相続放棄をすることへの反対意見が多数でした。

解説

相続放棄は、借金や保証人等の負の財産がある場合に行う方が多いのですが、Qさんの場合、借金があったり誰かの連帯保証人になっていたわけでもなく、残された財産は不動産と預貯金で、負の財産はないとのこと。
借金等も無いのに、親族からどんなに反対されても相続放棄をしたかったのは、将来の娘さん達のことを最優先に考えたからです。そして最終的に相続放棄をされました。
相続放棄の手続きをされた後も「本当によかったのだろうか?」と思い悩んで度々お電話を頂きました。
地域によっては、このように先祖代々続く共有名義の不動産の相続が多くあります。今までは先祖代々続く土地を守る意識で子供たちが引継いできたことも事実ですが、今回のように、逆に負担に思う方も多くいるのが現状だと思います。

ポイント!

昨今、相続したくない不動産が問題となっています。相続放棄をした場合にどんな事があるのかをみてみましょう。

●相続財産法人の成立

相続人全員が相続の放棄をした結果、相続人不存在(相続人がいない)となった場合には、相続財産法人が成立します。また、相続人不存在の場合、家庭裁判所は利害関係人(被相続人の債権者や特別縁故者など)又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任します。

●相続の放棄をした者による管理

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない、と民法第940条にあります。ということは放棄をしても先に説明した相続財産の管理人が選任されるまでは、本来の相続人全員が相続財産の管理をしなけれ ばならないということになります。
例えば、家屋があった場合にその家屋が老朽化して、今にも崩れてしまいそうな場合などは、放棄をしたと言っても管理が必要となります。

●残余財産の国庫への帰属

相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所は選任されたことを知らせるための公告をしたり、財産管理人が相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をしたりと様々な手順を踏み、法律にしたがって債権者や受遺者への支払いなどをします。
最終的に相続財産が残った場合は、相続財産を国に引き継ぎ、国庫に帰属となります。
ちなみに、財産管理人の報酬は相続財産から支払われます。