【事例23】生前贈与と遺留分

相談内容

Aさんは母親が亡くなり、相談に来られました。父親は既に亡くなっていたため、相続人はAさんと弟さんの2人のみです。お話しを伺うと、母親は介護をしてくれていたAさんに多く財産を遺したいと思い、公正証書遺言を作成していました。
その上、遺言の内容は2人が争うことのないように、弟さんにも財産を遺すように記載されていました。遺言で相続人の一人が有利になるようにする場合、遺留分に注意しなくてはいけませんが、今回の遺言書は、遺留分を侵害しない内容になっていました。
それにも関わらず、後日弟さんは依頼した弁護士からAさんに対して、遺留分減殺請求をしてきました。「自分が思っていた財産が残っていない、生前母はもっと持っていたはずだった」とのこと。Aさんは、「母親はおそらく遺留分を考慮して弟さんにも財産の渡る遺言書を作成したのに、なぜ請求されなければならないのだ」と困惑していました。

解説

遺留分減殺請求された原因は、Aさんが生前に母親から受けていた贈与でした。
生前贈与された財産は、被相続人の相続開始前1年以内に贈与されたものは遺留分減殺請求の対象になります。また、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても対象になります。 Aさんはこのケースに当たってしまい、結局はAさんも弁護士をたて、遺留分の対象についてお互いもめてしまう結果になってしまいました。
母親が残した遺言書の末尾には、2人で争うことなく仲良く分けてほしい旨の記載があったにも関わらず残念な結果になってしまいました。

ポイント!

遺言書を残すことは「争続」にならないための手段として活用されていますが、遺言書を残しただけでは解決にならない場合もあります。そうならないためにも、作成をする際は、まずは専門家に相談されるほうが良いのかもしれません。

●遺留分

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、遺産の一定割合が確保されます。これを遺留分といいます。今回の事例では、相続人がAさんと弟さんなので、Aさんに1/4、弟さんに1/4という割合で遺留分があります。そのため、遺産の1/4ずつAさん、弟さん共に確保されているのですが、もし遺留分を侵害していても、遺留分を侵害された相続人がそれでも良いとすれば、問題はありません。しかし、納得がいかなければ、『遺留分減殺請求』をします。
また、遺留分の算定にあたる遺産は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額+贈与した財産の価額を加えた額-債務の全額とされています。

●贈与した財産

結果の欄にもありますが、贈与した財産は、相続開始前の1年間にしたものに限り、その価額を遺留分の算定の際に算入します。また、当事者双方(贈与する人と贈与される人)が、遺留分権利者(遺留分がある相続人)に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものについても算入します。

 

●遺留分減殺請求

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければなりません。また、遺留分減殺請求はその意思表示を示せば良いとされていますが、一般的には請求をしたという証拠の為に内容証明郵便で文書を送付する方法が多いようです。