【事例25】25年前の遺言書は有効?

相談内容

Aさんが、一人暮らしの妹(Xさん)が亡くなったとして相談にお越しになりました。
Xさんの配偶者は既に亡くなっており、お子様がいらっしゃらない為、お兄様であるAさんが相続人代表として手続きを行うこととなったのですが、相続財産が分からないという状況でした。
そこでAさんにご一緒して、Xさんのご自宅でその他に相続財産がないか捜索を行ったところ、複数の預金通帳と共に、自宅金庫の中から約25年前に作成された公正証書遺言書の謄本がみつかりました。
その内容は、「すべての財産をXさんの夫のご兄弟であるBさんに遺贈する」とあり、付言事項には、Xさんの夫が亡くなる際にBさんにお世話になったことへの感謝の気持ちが綴られていました。
この遺言書が効力を生じる場合、すべての財産はBさんが受け取ることとなる為、AさんをはじめXさん側の親族は相続財産を受け取ることができず、Aさんは「故人の供養もままならなくなってしまう…」とご心配なご様子でした。

解説

作成して25年が経過していることから、内容が抵触する新たな遺言が作成されている可能性や遺言そのものが撤回されている可能性もあるため、まずは最寄の公証役場に赴き、遺言の検索システムを利用したところ、約3年前にXさんが新たな遺言を作成されていたことが判明しました。早速、該当の公証役場に行って確認すると、「25年前に作成した遺言は撤回する」というものでした。

ポイント!

今回のケースのように、遺言が書かれてから亡くなるまでに、長い年月が経っている場合や、故人の生活環境が大きく変化していると思われる場合には、書き直しや撤回の可能性がないか、注意を払うといいでしょう。

●受遺者が先に亡くなっていた場合の遺言

遺言者(Aさん)の死亡以前に遺贈を受ける方(Bさん)が亡くなっていた場合は、予備的遺言(Bさんが自分より先に亡くなっている場合についての記載)がない限り、その遺贈は効力を生じません。

●遺言撤回自由の原則

遺言は、遺言を書く人の最終的な意思を尊重するために作成されるものなので、何度でも書き直すことができます。一度遺言を書いたからといって、自分の書いた遺言に縛られることなく、その後の心境や状況の変化に応じ、好きなときに書き直すことが可能です。
前に書いた遺言と抵触する内容の遺言が後から作成されたときは、その抵触する部分については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。そのため遺言書には「日付」が不可欠になるのです。
以前の遺言を公正証書で書いたからといって書き直す際にも公正証書で作成しなければならないということもありません。しかし、無用な争いを避けるためには遺言を書き直す場合にも公正証書で作成することをおすすめします。

また、公正証書で作成しておくと、「遺言の検索」という制度によって、別居をされているご相続人にも遺言書の存在を簡単に見つけてもらうことができます。