【事例26】執行者の選任をすると楽

相談内容

後妻であるBさんが、ご主人Aさんが亡くなられたということで、相談に来られました。相続人はBさんと、前妻との間の長男Cさんと長女Dさんの3人です。現在、Bさんと長女Dさんが同居、長男Cさんとは、二十数年音信不通の状態が続いているということでした。そういった心配もあったのでしょう。被相続人Aさんは、自筆証書遺言を残されていました。
検認手続きも行い、いざその遺言を見せていただくと、「全ての財産を妻Bと長女Dに2分の1ずつ相続させる」と書いてありました。Aさんの財産は、自宅の土地建物以外に預貯金があり、金融機関からは解約手続きにはCさんの署名押印が必要だと言われました。

解説

遺言がある場合でも、手続き上、その遺言によって財産を受けない他の相続人の署名押印が必要となる場合があります。
今回のケースでは、Aさんは遺言執行者の指定をしていませんでした。このように遺言執行者がいない場合、金融機関によっては、遺言があっても相続人全員の署名押印が必要となることがあるのです。
Bさんは、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立て、Cさんと連絡を取ることなく手続きを行なうことができました。

ポイント!

遺言書が見つかった場合は、手続きの進め方がその種類によって変わります。

●遺言書の検認

公正証書遺言であれば、すぐに中身を確認してそのまま手続きが出来ます。
一方、自筆証書の場合は、そのままでは使うことができません。まず、家庭裁判所で検認という手続きが必要となりますが、この手続きが結構大変です。
遺言書を書いた人の生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めるところから始まり、相続人を確定後、検認の申請を提出。裁判所から通知された日時に相続人が集合し、ようやく開封・検認となり、長ければ申立てから2ヶ月かかることもあります。さらに厄介なことは、こうして検認を受けた遺言書も、使えない場合があるということ。検認の手続きは、その遺言書の有効・無効を判断するものではなく、ただ「こんな遺言書がありますよ」、ということを証明するに過ぎない手続きなのです。
自分で書く遺言書は、作るのは簡単ですが、使うのは本当に大変です。

●遺言執行者の選任

遺言書の内容を読んでみて、次に、遺言執行者が選任されているかどうかを確認します。
遺言執行者とは、遺言の中身を執行、つまり実現する人のことです。遺言執行者は、遺言者がその遺言において指定します。公正証書遺言においては指定されている場合が多いのですが、自筆証書遺言では指定されていない場合が多くみられます。
不動産の名義変更などは、遺言執行者がいなくても手続きをすることができます。一方、金融機関口座等を解約したり名義変更したりといった手続きなどでは、遺言執行者が指定されていないと、相続人全員の実印と印鑑証明書を要求される場合があります。
遺言執行者の指定がない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることも可能です。なお、遺言執行者は相続人でも受遺者でもなることができます。