【事例30】内縁の夫は遺族年金をもらえるの?

相談内容

「会社の先輩(女性)が亡くなりました。35年前の離婚以来、ある男性と亡くなる前まで事実婚関係にあり、マンションの隣室同士で住んでいたそうで、葬儀も、その内縁の夫である男性が喪主を務めました。その先輩には、離婚した夫との間に、既に成人した子供がいますが、その子とは扶養関係にはなかったようです。内縁の夫である男性は60歳。これからの生活で年収が850万円を超えることはありそうにない状況ですが、遺族年金を受給できるのは誰なのでしょうか?」というご相談でした。

解説

遺族厚生年金を受け取ることができる遺族とは、配偶者、子、父母、孫または祖父母で、なおかつ死亡時にその者によって生計を維持されていた者とされています。ただし、夫、父母、祖父母は死亡当時55歳以上の方に限られており、しかも遺族年金の支給は原則60歳からとなっています。また子、孫は18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者に限られています。
この「配偶者」には、届け出による婚姻関係ではない、いわゆる「事実婚関係のある者」も含まれます。事実婚関係にある者とは、互いに協力して社会通念上、夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者をいうと解されています。また生計を維持されていた者とは、故人と生計を同じくしていた者で、年収850万円以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者をいうとされています。
遺族年金の受給資格の順位は、配偶者と子、父母、孫、祖父母の順になっていますので、今回の場合、内縁の夫である男性が女性との間に事実婚関係及び生計維持関係が認められれば、遺族年金を受給できることになります。亡くなられた女性と男性は、事情によりマンションの隣の部屋同士で住んでいたため、住所は異なっていましたが、一緒に住んでいなかった事情を説明した上で、夫婦としての共同生活を現実に営んでいたと認められる事実関係、さらに生計維持関係を証明することで、男性は遺族年金を受給することができました。

ポイント!

遺族厚生年金は自分の老齢給付と併給調整されます。どのように支給されるか、年金事務所で確認して申請します。専門家に依頼するのであれば、社会保険労務士に依頼します。

●内縁配偶者への遺族年金の給付

遺族年金は相続とは異なり、一緒に生活していた内縁関係の相手でももらえる場合があります。上のケースは戸籍上の配偶者がいない場合ですが、戸籍上の配偶者がいる場合であっても、事実上離婚状態にあり夫婦としての共同生活がないといいうる場合には、内縁関係にあった者を事実婚関係にある者と認めて、遺族年金が支払われたという最高裁の判例もあります。この判例では、婚姻関係が実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して解消される見込みがないときを事実上の離婚状態にあると判断しています。もっとも、夫婦としての共同生活がないことについての明確な基準というものがあるわけではなく、戸籍上の配偶者がいる場合には、簡単には認められないものと思われます。

●未支給年金

年金は亡くなった月分まで受け取ることができます。年金の支払いは、偶数月に前2か月分がまとめて支給される為、例えば5月に亡くなった場合、4・5月分をまだ受給していない状態で亡くなったことになるので、この4・5月分は未支給年金として請求することができます。この年金を受給するには、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が「未支給年金請求書」を提出する必要があります。但し、亡くなった後に、故人の口座に自動的に振り込まれた場合でも、「未支給年金請求書」を提出しなければなりませんので注意が必要です。なお、受給権者死亡の連絡をせずに放置しておくと、年金は振り込まれ続ける場合があり、後日返還の手続きをしなければならないこととなります。例えば、4月に亡くなったのに6月に4・5月分が故人の口座に振り込まれた場合、5月分は返還しなければならないことになります。年金受給権者死亡の届けと未支給年金の請求は、早めの手続きが必要です。