【事例35】相続人が行方不明

相談内容

ある日相談者Aさんから「妻Bが亡くなったのだが、息子が行方不明のため相続の手続きが出来ない」との相談がありました。ご夫婦の間には息子Cさんがいたのですが、大きな借金を作ったため家を出て行ってしまい、それから音信不通になってしまっているとのことでした。相談後、息子さんCの居場所を突き止めるために、まず、本籍地で戸籍附票を取得しました。附票とは個人の住所の履歴が載っている書類のことです。これを確認すれば、Cさんが今現在どこに住所をおいているか分かる可能性があります。しかし、今回取得したCさんの附票に記載されている住所地には、線が入っており抹消されていました。居住の確認が出来ないため役所が職権で抹消をしたというのです。つまり今現在、Cさんは住所不定の状態であるとのことです。念の為、Aさんは抹消された住所地に行ってみたのですが、やはり人が住んでいる形跡はなかったそうです。

解説

その後、Cさんを探し出すのは困難になりそうであったので、Aさんと相談した上で「不在者財産管理人選任」の制度を使い、相続手続をすることにしました。不在者財産管理人選任とは、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に家庭裁判所に申立て、財産管理人を選任してもらう手続きです。幸い、Aさんには財産管理人になってもらえる方がいたので、その方を候補者として申立てを行いました。その上で、その財産管理人がCさんの代わりに遺産分割協議を出来るよう家庭裁判所に許可をもらい、相続の手続きをしました。Aさんとしては遺産の整理は出来ましたが、妻Bが亡くなったことを息子Cさんに伝えられないことが心残りであるとおっしゃっていました。「自分が生きている間に妻Bの墓前になんとか息子Cを連れていき、はじめて妻Bの相続が完了する」と、最後に私たちに話してくれました。

ポイント!

故人が遺言書を遺さずに亡くなった場合、相続人が2名以上いる場合の遺産分割は共同相続人の協議により行います。この遺産分割協議は相続人全員の合意により成立しますので、相続人の一部に所在が不明な方がいる場合は遺産分割協議ができず、相続手続を進めていくことができません。このような場合の対処方が次のふたつの手続きです。

●「不在者の財産管理人」の選任

今回の事例で行われた、「不在者の財産管理人」の選任は、不明者の生存を予測して行なうもので、相続人等の利害関係人が家庭裁判所に対して請求します。家庭裁判所により財産管理人が選任された後は、その管理人が他の相続人との間で遺産分割協議を行うことになりますが、管理人はこの際、改めて遺産分割を進めることの許可(権限外行為許可)を家庭裁判所に申立てる必要があります。

●「失踪宣告」の申立て

一方で、その不明者について法律上、死亡したものとみなす効果を生じさせる制度が「失踪宣告」です。行方不明者従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みがないとされる「不在者」)に関して、その生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、または戦争・船舶の沈没・震災などの死亡の原因となる危機に遭遇し、その危険が去った後、その生死が1年間明らかでないとき(特別失踪)は、家庭裁判所への申し立てにより「失踪宣告」をすることができます。