【事例39】父の相続をしていなかったために

相談内容

Aさんが、お母様がお亡くなりになられたとのことでセンターにご相談にいらっしゃいました。
預貯金のほかにご実家の不動産がありました。けれど、Aさんも独立してマンションを買っている為、空家にはしたくないと売却をお考えでしたので、早速、不動産の登記事項証明書を確認しました。すると、所有者はお母様ではなく10年前に亡くなったお父様の名義のまま…。そこで、Aさんにお父様のご相続の際のお話をうかがうと、「もともと両親だけで住んでいた家で子供たちは同居しておらず、不動産の名義変更はしなくても大丈夫と聞いたので、母が住み続けるということで不動産については放っておいた」とのことでした。
相続関係を確認すると、Aさんの弟のBさんは5年前に亡くなっていました。Bさんには結婚して奥様(Cさん)はいらっしゃいますが、お子さんはいらっしゃらないとのことでした。

解説

この場合、お母様の相続とお父様の相続では相続人が異なります。お母様の相続では相続人はAさんだけになりますがお父様の相続財産については、当時ご存命だったBさんが相続し、Bさんの死亡により妻のCさんが相続しています。(このように被相続人が死亡した後、その遺産分割協議が整わない間に相続人が亡くなったことにより新たな相続が発生することを「数次相続」と言います。)
Aさんは、「おやじの相続に弟の嫁がかかわってくるのか!」と、とても驚かれていました。ただ、Aさんのお話では、お母様とCさんとは折合いが悪く、BさんCさん夫婦には子供がいないこともあってCさんはほとんど夫の実家に顔を出すことがなかったそうです。
そのため、Bさん亡き後は、お母様はもちろんAさんたちとも一切関わりを断っていたということですが、「財産の話になると何か言ってくると思う」とAさんは懸念していました。いざ連絡を取ってみると、Aさんの読みどおり、Cさんが権利を主張してきたため、話し合いの末、なんとか現金での解決となりました。

結果

お父様が亡くなられてすぐに名義変更をしていれば、お母様とAさん、Bさんの3人での協議ですんだものを、このように不動産の名義変更をそのままにしていたばかりに、Bさんの奥様とも話し合いをしなければならない事態となってしまいました。
揉めることはなくとも、相続人が増えれば手続きは煩雑になり、名義変更に支障が生じるおそれがあります。相続発生後は、速やかにもれなく手続きを行うことが望まれます。

ポイント!

●相続登記の申請

土地や建物などの不動産を相続した場合には、登記上の所有者名義を故人から相続人名義に変更する手続きを行なう必要があります。これらの登記を相続登記といいます。

●相続登記を忘れるデメリット

しかし、相続が発生しても相続登記をせず、故人名義のままとなっているケースは多々見受けられます。
相続登記がなされていないと所有者の把握が困難なため、道路の拡張等の公共事業に支障が生じますし、昨今問題となっている、“空き家”の増加について、その大きな要因の一つとも指摘されています。また、これをせずに故人名義のままだと、権利関係が不明確ということになり、不動産を売却しようとしたときにすぐ売却の手続きに入ることがができず、担保に入れてローンを組んだりすることもできません。
いざ相続登記をしようとしても、相続が発生してからの時間が経過すればするほど、相続人に相続が発生して新たな相続人が増えていたり、所在不明となった方がいたり、認知症等が進行し意思の表示ができなくなったりなど、相続の手続きがスムーズに行かなくなる恐れがあります。
今回のケースのように、そのままに放置していたばかりに思わぬ不利益を受けることがあるのです。
相続発生後は速やかに漏れのない手続きを行うことをお勧めいたします。