【事例52】自筆の遺言は要注意 ~財産の記載~

相談内容

Aさんが奥様と一緒に不安な顔をされて、相続の相談にお越しになりました。亡くなったのはAさんの実の兄Xさんです。Xさんには、配偶者もお子さんもいない為、Xさんの兄弟姉妹が相続人となります。Xさんには、姉が2人、弟がAさん含め5人いますが、生前よくお付き合いされていたのは依頼者のAさんお一人でした。
Xさんは自筆の遺言書を残されていました。自筆の遺言書は家庭裁判所へ検認の申立が必要です。Aさんは色々調べた結果、検認の申立はかなり大変だと分かり、相談にいらっしゃったのです。「戸籍の収集が兄弟姉妹間の場合、どうしても広範囲で通数が多くなるので、一般の方だと大変苦労されます」との説明にAさんも納得されていました。

結果

1ヶ月半程して、検認の申立が済み、検認の当日、通知を受けた兄弟姉妹が全員集まり、法廷に入るまでは、皆さん久しぶりなのか和気あいあいと近況等をお話しされていました。ところが、検認が済み、法廷から出て来くると、それまでのにこやかな顔は失せ、「こんな遺言書は認めない」とか「親父の時は遠慮したけど今回は…」等の不満が噴出していたのです。開封した遺言書は「Aさんがすべて相続する。遺言執行者もAさん」という内容だったからでした。
遺言書に基づき、早速、相続手続を始めました。
Xさんはお父様から受け継いだ「ひかり荘」というアパートを経営されており、遺言書には「土地を含むひかり壮をAさんに相続させる」と書いてありました。しかし、調査するとXさん名義の建物は合計で5棟。法務局の見解では、遺言書にある建物が、そのうちどれを指すのか分からず、これでは登記できないというのです。他の相続人からの協力は、いまさら得られるはずもなく、なんとか疎明資料を集めると、5棟分の賃貸借契約書にそれぞれ「第1~第5ひかり荘」と記載されていることが分かりました。さっそく司法書士に相談して法務局と掛け合い、無事5棟ともAさんの名義に変更できたのです。契約書が決め手となり、難を逃れました。
自筆の遺言書の場合、記載方によっては、効力が生じない、手続ができないという恐れがあります。Aさんご夫婦にはお子さまがいらっしゃらなかったので、その後アドバイスをさせていただき、遺言書をお互いに作成されました。公正証書でされたのは言うまでもありません。

ポイント!

●自筆証書遺言の注意点

自筆証書の遺言とは、遺言者が遺言の内容をなす全文、日付、氏名をすべて自筆で書き、これに印を押した遺言書です。手軽に作成できる反面、要式を満たさず無効となるおそれや、記載方法や内容が誤っていると執行ができないというおそれがあります。また、全文を自筆で書く必要があり、パソコンやタイプライターで代用できない為、財産が多数ある場合には、遺言者にとって相当な負担になるでしょう。書き漏れや誤記等で無用な争いの種にもなるおそれもあります。一方で、公正証書で遺言を作成すれば、自筆証書での危惧や不安、負担は軽減されますが、手軽に作成できるわけではなく、公証役場での手続きが必要となります。

 

●民法改正による方式緩和

上記のような注意点があった自筆証書遺言ですが、このたび、民法のうち相続法の分野について大幅な改正が行われました。その中で、自筆証書遺言については、方式緩和が図られています。自筆証書に一体のものとして相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しない…つまり、パソコンで作成した財産目録や銀行通帳のコピー、不動産の登記事項証明書を目録として添付して遺言を作成することができるようになるということです。
この遺言書の方式緩和は、平成31年(2019年)1月13日から施行されます。