お墓のメンテナンス

 霊園や寺院の場合、お墓の管理費用として毎年ないしは毎月一定額を支払います。平均的には年間で5,000円前後~15,000円前後が相場と言われていますが、この費用はあくまでも霊園や寺院の共用部分である「通路」や「水場」などの維持・管理、整備するための費用であり、個々のお墓については自分達で維持・管理をしていく必要があります。
 例えば、ご自身のお墓の石が汚れている、雑草が生えている場合は、基本的に自分達で整備をしなくてはなりません。一般のお墓は、耐久性の高い石材を使用しているため、建立してすぐに壊れるような事は少ないですが、長い年月の間、日光や雨・風にさらされることによって、徐々に石に汚れやシミが発生してきます。また地震や地盤の沈下などにより石の欠け、ズレなどが生じて老朽化していきます。
 建立し数年の間に発生する汚れの主な要因は、ほこり・排気ガス・油の付着・雨水などによるもので、それが徐々に蓄積され、更に年月が経過してくると、カビやシミなどが発生し、石内部の鉄分が表面にあらわれ、サビ・カビ・コケなどが付着し、変色し光沢を失っていきます。見た目の問題だけでなく、場合によっては安全面においても問題がでてくるため、定期的なメンテナンスが必要です。
 近年は人口の減少や都市部への人口集中など様々な要因もあり、永代供養墓、納骨堂といった屋内・合同墓も増えており、改葬や墓じまいをする方も増えつつあります。

お墓の掃除

ご自身で掃除をする

●周辺の掃除

雑草を刈り、ゴミ・落ち葉などを拾います。砂利はザルなどにあげて水洗いします。

●墓石の掃除

スポンジなどのやわらかめの素材のものに、水を含ませて洗いましょう。タワシなど硬い素材のものは、石を傷つける要因となりますので避けましょう。また、家庭用の洗剤などを使うと変色やシミなどの原因となる場合があるため、洗剤を使う場合は石材専用の洗剤を使いましょう。
文字の彫刻部分などは、歯ブラシなどで掃除をすると良いでしょう。

●小物類の掃除

花筒、線香皿などは、取り出してスポンジなどで水洗いしましょう。
最後に乾いたタオルで水をふき取ることも忘れずに。

これだけは準備しよう!
□タオルや雑巾
(水拭き用と乾拭き用)
□スポンジ □歯ブラシ □ゴム手袋や軍手
□ほうき □ちり取り □墓石用洗剤 □ザル
□バケツ □ハサミ(剪定バサミ)

*ほうき、ちり取り、バケツなど、墓地によっては常備されているところもあります。

専門業者に依頼する

お墓が遠方で定期的に行くことができない、高齢でお墓参りができない、汚れがひどくて落ちない・・・など、ご自身で掃除をすることが難しい場合は、専門の業者に依頼して、定期的にお墓の掃除をしてもらう方法もあります。お墓の掃除だけでなく、供花や焼香、お墓の状態確認や修繕、引越しなども対応しているところもあり、非常に便利です。一度検討していてはいかがでしょうか。

お墓の修繕・建替

 耐久性の高い石を使っているとはいえ、長い年月が経過するうちに墓石も徐々に劣化していきます。経年によるものだけでなく、地震などによる傾きや破損も生じます。
 特に、石自体に傾きや破損が生じた場合は、落下や倒壊などの危険も生じるため、早めの対処が必要となります。近年は技術も進化し、建立の段階から地震で崩れないような工法も多数開発されており、建立後の耐震・免震工事の方法も様々あります。また、墓石のズレや、石と石の隙間からの水の進入などによる劣化防止においても、専用のコーキング剤なども開発され、抑制することができます。その他、石専用の特殊な洗剤や、研磨によって墓石の光沢を復活させたりすることも可能です。
 修繕や建て替えには法的な手続きは必要ありません。ただし、必ず霊園や寺院の管理者にその旨をお伝えし、許可をもらってから進めるようにしましょう。

お墓の引っ越し(改葬)

 お墓を移すことを『改葬』といいます。お墓を移すためには行政手続きが必要となりますので、一定の時間と手間がかかります。
 改葬は、①お骨だけを別のお墓に移す、②お骨だけでなく墓石ごと全てを移すケースがあり、法的な手続きが必要となります。また、最近では分骨をする方も増えています。火葬場の段階で分骨する場合と、埋葬されている遺骨を分骨する場合とでは手続きが異なりますので、事前に相談をしましょう。

一般的な『改葬』の流れ

① 新たなお墓の場所・石碑の確保。現在埋葬されている墓地の管理者から改葬許可を得る。
② 移転する先の墓地管理者から『受入証明書(永代使用許可書)』を発行してもらう。
③ 現在の墓地のある市区町村役場で「改葬許可申請書」を入手する。

申請書に必要事項を記入し、さらに現在埋葬されている墓地の管理者の署名・捺印をもらい、『埋葬証明書』を発行してもらう。『改葬許可申請書』を現在の墓地にある市区町村役場に提出し、それと引き換えに『改葬許可書』を交付してもらう。
④ 『改葬許可書』を現在の墓地に提示し、遺骨を取り出します。

その際に閉眼法要(※1)と呼ばれる儀式を行います。
墓石からの取出作業は石材店が行い、基本的には更地にして返却。
⑤ 『改葬許可書』を新たな墓地に提示し、遺骨を新しい墓地へ移し開眼法要(※2)を行う。

※1.閉眼法要・魂抜き・・・お墓の撤去する際、お墓に眠るご先祖様の魂を鎮め、魂を抜きとるための儀式。住職が墓前で読経を行います。

※2.開眼法要・・・新しいお墓に故人の魂を入れ、安住できる浄土にするための儀式。住職が墓前で読経を行います。それとは別に、納骨法要という儀式もあります。近年は開眼法要と同時、もしくは49日法要時に行います。

改葬にかかる費用例

※あくまでも例・参考です。地域・業者などにより異なりますので必ず確認しましょう。

項目 費用
墓石の処分・区画整備 1㎡あたり10~15万円程度
遺骨の取り出し 1遺骨あたり5万円前後
納骨 1遺骨あたり3万円前後
墓石運搬 20~80万円程度(※移動距離や重量などにより変わります)
埋葬証明発行手数料 管理者へ1通あたり500円~1,500円程度
閉眼法要・開眼法要 お布施各3万円~5万円程度
新たにお墓を建立する(永代使用料+墓石) 200万円前後(※地域により異なります)
<注意点>
  • 『改葬許可申請書』『埋葬証明書』『受入証明書(永代使用許可書)』の証明書類は、遺骨1名ごとにそれぞれ必要となります。自治体ごとに提出書類が異なる場合がありますので事前に確認しましょう。
  • 現在の石碑と遺骨を一緒に移す希望がある場合、石碑を持ち込める墓地と持ち込めない墓地がありますので事前に確認しておきましょう。
  • 元々のお墓の住職が、先祖代々の長きにわたる付き合いもあり改葬を認めてくれないというトラブルが増えています。基本的に正当な理由がない限りは、住職が改葬を拒否することはできませんが、このようなトラブルを避けるためにも元のお墓には早めに相談をし、なぜ改葬が必要なのかをきちんと話しておきましょう。
  • 改葬には想像以上の費用がかかる場合がありますので、元のお墓はもとより、身内にもきちんと相談した上で決めるようにしましょう。

墓じまい

 最近、『墓じまい』という言葉を耳にする人も増えているのではないでしょうか。少子高齢化や都市部への人口集中、ライフスタイルの変化などもあり、「お墓を管理することができない」、「お墓が遠くお墓参りに行けない」、「後継ぎがいない」などの理由で、やむを得ず『墓じまい』を選択するケースが増えています。
『墓じまい』も単に遺骨を取り出し、お墓を処分するだけではなく、法的手続きも必要となり、何よりも先祖代々続いたお墓をなくすということで、親族感での意思統一も必要となり、想像以上の時間と労力がかかります。

一般的な『墓じまい』の流れ

① 親族間できちんと相談し合い、『墓じまい』の意思統一をはかる。
② 現在のお墓の管理者(霊園や寺院)に相談し、許可をもらう。
③ 遺骨の行き先を検討・手続きをする。

<墓じまいした後の遺骨の行き先については複数の選択肢があります>
*近所の別のお墓を購入して改葬する。
*永代供養をしてくれる合同墓や納骨堂を購入して改葬する。
*海などへ散骨する。

別のお墓へ移動する場合や、永代供養墓などへ合葬する場合は「改葬届け」「受入証明」が必要となりますのでご注意下さい。
④ 石材店への依頼

遺骨の取り出し、墓石の撤去、墓地整備をして管理者に返却するための作業を石材店などの専門業者へ依頼します。
⑤ 遺骨取り出し・閉眼法要
⑥ 撤去作業・整備工事
<注意点>
  • 寺院の場合、先祖代々長期間付きあいのあった関係が途絶えるため、高額な離檀料を請求されるケースがあります。
    離檀料はお世話になった御礼としてお渡しするお布施になりますので、決まった金額はなく、法的に支払いの根拠や義務があるわけではありません。
    しかし離檀料をめぐるトラブルは多く発生しています。出来る限り早めに相談し、墓じまいの理由をしっかりと説明し、長い間お墓を管理して下さった感謝の気持ちも表すことが大切です。